【PC講座】パソコンはこうして音を鳴らす【番外編】

 一晩寝て、ムスメの起きてこない朝。
 一日の始まりは、目が覚めるまでゆったりと音楽聴いて、コーヒー飲んで、頭が回り出してからなんかする。その方が割とうまくいく。
 ……まぁ、時間によってはすぐにムスメの飯の支度になっちまうんだけども。

 おーいアルテミス! ようつべ(Youtube)開いてなんか音楽鳴らしてくれるー?

紫文字=アントワネット(画像:右) シアン文字=アルテミス(画像:左)

 ……どしたの、アントワネットさん。

「おはようございます、指揮者さま……
 この子とお話をしていました……あなたは同じ機械なのに、どうやって音を奏でているのかって……」
「おねえさんはてまわしのオルゴールさんですから、わたしたちのようなかんぜんな機械仕掛け、というわけではないですけどね。
 マイコン制御の電子オルゴールとかなら、よりわたしにちかいとおもうですよ」
 そうだね。ガルシンの世界では演奏する楽器とは違う立場のようにアントワネットさんを描いてるけど、手回しオルゴールの動力原理って歯車と手動動力源(ネジでもハンドルでも)だから、私からしてみるとアントワネットさんも『演奏する楽器』である事には違いないなぁ。
「それじゃ、ちょうどいいですから、
 おねえさんにわたしのおとをならすしくみ、おしえたげるです!
 ますた様、サポートおねがいするですよ!」
 え、えぇー……いやそれより、なんか音楽かけてくださいってば。
 原稿作業したいんだけど。
 う……2人の目が白い。

 わかった! わかったってば!
 私も手伝うから、進行はアル坊、お前やれ!!
「あい、さー! です! ありがとうございまーす!」

パソコンの内部では、音はこう処理されている

「あなたは、よくキラキラ光る円盤を飲み込んだり、指揮者さまの手元の装置で操作された時に音楽を鳴らしているように見えるの……」
「はい、そのとーりです。わたしたちパソコンは、こうしたいろんなとこに記録された音楽の『ファイル』を記録されたとおりにながします。
 たとえば、ファイルがおねえさんの『歯』で、アンプはハンドルやねじの部分、スピーカーは鳴る音、とおきかえてもらうと、わかりやすいかもしれません」
 なかなか例えが上手いじゃん。
「だてにずーっとますた様のちかくにいないですよ、えっへん」
「そうね……決められた順番で造られた歯を、弾く事で音を鳴らすのが私達オルゴールだから……言われてみると、似てる、かも」
 確かにハンドル回しの勢いやねじの巻量次第で音の速さや再生時間は変わるんだけど、なんか微妙に違う気もするんだよね……
 まぁいいか、2人とも笑顔だし。黙っとこ。
 『私が操作した時に』ってのは、
 きっとネットからのストリーミング再生の事だと思うんだ。
 ストリーミング再生の場合は、ファイルは当該サービスのサーバ上にあるわけだから、マウス操作だけで完結しちゃうわけだし。後はiTunesなんかで音楽鳴らしてる時もそうか。
「音楽のデータを読み込んで、じっさいの『音』に変換するのがプレーヤー、それをスピーカーで鳴らせるように音の波をおおきくしていくのがアンプのやくめです」
 正しくは『アンプリファイアー(増幅器)』という言い方をするよ。
「アンプもいろいろあるですがー……」
 おぉっと、アルテミス、それはまた別の話にしような!
 ここでアンプの種類に触れたら、話が大きくなりすぎて収集つかなくなるぞ。
「あい。じゃますた様、つぎはどこからおはなしすればいいですか?」
「今の話で、アルテミスがどうやって音を鳴らすかの仕組みは解ったけれど……その動作を、あなたは実際に何処で行っているの?
 私、それが知りたい」
 よしきた。そうなると、次は内部機構の話だね。
「ますた様、よろしくおねがいしまーす!」
 そこで丸投げかよオイ!!!(#°Д°)
 ……ったくもー……この相棒はー……

実際に処理を行うところ

 よし、じゃあここからは私が代わって、実際に何処のパーツでどんな処理をするかを話していこうか。改めて宜しくね。
「よろしくお願いします、指揮者さま」

 普通、PCのサウンド関連の機能は、『サウンドチップ』という回路で制御する。
 マザーボード上だとこの辺になるかな。
「こんなに小さな金属の塊が、あんなに複雑な音を奏でるのですか……?」
 小さな塊、と言っても集積回路だからね。この中には、『オーディオコーデック』という音楽用の圧縮、及び圧縮解除用のハードウェアが詰まってるんだ。
 みんなが演奏した音楽は、まずここで一旦圧縮されてデジタルの音楽データになる。
 これをアルテミスで鳴らしたいときは、再びここで圧縮解除をかけることで、デジタルのデータをアナログの音に戻す、という処理をしているんだよ。
「圧縮……? 小さくする……?」
 みんなが思ってる以上に、音のデータって膨大なんだよ。それこそ、人間の耳には聞こえない領域の情報まで含めてしまうとね。
 で、アルテミスでこれを扱うには、機械で処理できるレベルまで情報を圧縮していかないといけないわけだ。この作業が『エンコード』。
 そして再生するときは、この圧縮された情報を圧縮解除して復元しながら、アンプで信号を増幅してスピーカーに送り、鳴らす、という工程をとる。これが『デコード』。
 この動作を司るのが『DAC(デジタル-アナログコンバータ)』と『ADC(アナログ-デジタルコンバータ)』って回路だ。DACの方は、割とスマホのオーディオアクセサリなんかでも耳にする機会は多いと思うから、『言葉だけでも知ってる』という人はそこそこ居るんじゃないかな。
どこまで音声データから正確に情報量のおおい音を再現できるか、がコンバータの性能のみせどころです!
 じつはこれも、おたかいマザーにはけっこういいチップがついてたりするんですよ! ぎゃくに、やすいノートパソコンとかだと『スマホのほうがいいってことにもなったりするですね」
 それな。昨今の高級マザボだと
 最初からハイレゾ対応のチップが付いてたりするからな。

 後からハイレゾ対応のインターフェースを追加しようと思うと1万円からが最低ラインだし、それが最初から備わってるっていうのは、なかなかよ。高級マザーの場合はそれ以外の諸元もゴツいし。
 そう考えると、あの小さな筐体に再生機能も録音機能もある程度のレベルで纏まってて、アプリの性能如何で更に使い途が広がるスマホはホント驚異よね、って思うわ。
 Podcastなんて最悪iPhoneひとつでできちゃう手軽さ……
「……では、同じ記録でも、再生した時に流れる音はパソコンごとに違うということなのですか?」
 お、アントワネットさん、鋭い!
 その通り! 同じデータでも、使っているインタフェースだけでなく、スピーカーやヘッドホン・イヤホンといった再生側の機器やその間をつなぐケーブルなどでも音質はかなり左右されるから、量産型モデルで全く同じ構成の機器を使ったり、という事でもしないと、『同じ音質の音』というのは流れない。
 この辺が『音質は視聴側の再生環境如何』って私がいつも言ってる理由よ。
「このへんは、もっとほりほりするとですね――」
 ……アルテミス。
 そっから先は言ったらアカン。その先は闇だ。闇の底なし沼だ……
「底なし沼……?」
 アントワネットさん、この先の『ピュア・オーディオ』の世界は
 マジでアカンのです。
 機器に恐ろしいほどの金がかかるのはまだしも、家の何処のコンセントから電源を取るか、果ては『発電所で音が変わる』っつって自分の好みの音を求めて引っ越しを繰り返す輩まで居る世界なんで……
「さらっと、ぜーんぶいっちゃってるじゃないですかー!!」
 ……やっちまった。
 まぁ、私のような貧乏人じゃ注ぎ込める資源も限りがあるんで、それなりの所で妥協するのが一番なんだよ。マジであっちの世界はケーブル1本○万円、スピーカーが6桁するとか諭吉さん何枚あっても足りない世界だもの。
「私の知らない世界が、まだまだあるのね……」
 『知らなくて良い』世界だけどね。
 ああそれと、マザボに着いてくるサウンドチップ周りの機構は『オンボードサウンド』という言い方もするよ。私も良くこの言い方をするんで、覚えておいて損はないかな。
「指揮者さま、もし、この機構が壊れてしまったら……
 その時は、アルテミスは音を鳴らせなくなってしまうのですか?」
 大まかに言うとそうなるけど、サウンドチップがイカレてもBIOSエラー時(起動すらしない致命的なハードウェアエラー発生)の警告用ビープ音は鳴らせるし、PCI-EXバスに刺すカード型の基板(サウンドカード)やUSB接続型のインターフェースもあるから、周辺機器増設で回避する事は十分可能だよ。
 その話は、また別の機会にしようね。
「それだけ聞けて、よかったです」
「このへんはデスクトップパソコンのつよみですよね、えへへんへん。
 ノートパソコンだと、カード型の基板はつかえませんから、USBしかえらべませんよ。きをつけてくださいねー」

処理の仕組みはここまで、この先は

 ――と、これでパソコン内部での音の処理の話はおしまい。
 この先は、『再生』と『録音・録画』で必要な機材や知識が変わってくる。
 勿論、この番外編ではその両方に対応していくよ。
「でも、いっぺんにどっちのおはなしもしたら、あたまがこんがらがっちゃうです」
 そうだね。だから、『再生特化編』と『コンテンツ作り編』でその辺はキッチリ分けて、少しずつやっていく計画を立ててる。
「けーかくだおれだけはしないようにしてくださいですー。
 ますた様、それでいくつやりたいことをほっぽりだしてきたですか。
 おにいちゃんたちもおこってるですよ」
 解ってるよ……善処はする。するけどもムスメの世話もあるし、更新おぼつかなくてもそれは許して。リアルで余裕なくなるとマジで無理。
「指揮者さま、アルテミス、その時は、またご一緒しても良いですか……?
 同じ機械として、アルテミスの仕組み、とても興味深くて……」
「はい! ぜひ、きてくださいー!
 パソコンのせかいは、とってもおくがふかくておもしろいですよー!」
 良かったな、アルテミス。仲間ができて。

 さて、それじゃ私は先にお暇して、ムスメのお世話に戻っておこう。

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